〜小説〜
ダイブ
第六章 オンライン
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ミサは相変わらず一番早く起きていた。
僕とサトルはほぼ同時に起きるがミサだけが早い・・・
なにか理由があるのか?
まわりの建物から、僕らは塔の見える町にいることが分かった。
しかし、そこは午前中にログインしたときとは少し違う風景だった。
「人・・・いっぱいいるね。」
周りには僕らと同じようにテストプレーをしているプレイヤーがいた。
ほとんどが3人一組で行動しており、武器屋の前で品物を見ていたり、会話をしていた。
遠目ではプレイヤーと村の人の区別は出来なかったが、おそらくかなりの人数のテストプレイヤーがこの町にいた。
いったい何人雇っているだろう・・・?
僕らが女神像の前でたたずんでいると鎧姿の男が近づいてきた。
午前中まではこんなキャラはいなかったので、テストプレイヤーの一人だとすぐに分かった。
鎧姿の男は笑顔で僕らに話しかけてきた。
「やぁ、君たちもテストプレーを頼まれた人たち?」
「はぁ・・・」
僕はいきなりのことだったので、つい素っ気ない態度で返事をしてしまった。
「そんなに警戒しなくていいよ。
俺は高尾(タカオ)っていうんだ。
装備から見るとまだ始めてまもない感じかな?」
「僕はタクヤっていいます。
こっちはサトルとミサです。」
ミサは軽く会釈をした。
「はじめまして。
ところでさっき僕達を見て始めて間もないといいましたよね?
みなさんは違うのですか?」
そういえばそんなこといってたな・・・
「俺たちは4日前からプレイしているよ。
一番長いパーティーだと1週間ぐらい前からやってるみたいだけど。」
どうりで周りの連中の装備が強そうだと思った。
でもそれってかなり不公平じゃないかな・・・
僕はプレイ時間が他の人より少ないことに少し不満を感じた。
「その様子だとまだゲームになれてないみたいだね。
プレイヤーカード渡すから困ったらいつでもメッセージを入れていいよ。」
「プレイヤーカード?」
「タクヤまだヘルプ読んでなかったの?」
ミサがモロに不満そうに僕の顔を見た。
「あーっ・・・忘れてた・・・」
サトルを見たが同じく苦笑いしている。
僕だけじゃないじゃん・・・
「もー・・・
プレイヤーカードを交換したら友達登録されてお互いの場所がわかったり連絡取れたり出来るんだよ。
いままであんたたちしかいなかったから意味なかったんだけど。」
ミサは腕を組んで得意げに説明をしてくれた。
「ちゃんとヘルプ読んだ子がいたんだ。
えらいね。でも知ってる?
同じパーティー同士でも交換できるんだよ?」
「なるほど!
はぐれたり一人だけ町に戻されたとき合流するためにですね?
ミサも調べるならちゃんと調べとかなきゃ。」
「タクヤうるさい!!!」
怒られた・・・
またにらんでる・・・
「さて俺はそろそろ行くね?
連れを待たせているから。
お近づきの印にこれあげるよ。」
タカオさんは苦笑いの後、なにか書いてあるカードのようなものを三枚渡してきた。
「それじゃあ、プレイヤーカードは送っておいたから暇になったら僕にも送っておいてね。」
そういってタカオさんは小走りで町の奥へ向かった。
結構いい人だったな・・・
そういえばこれなんだろう。
僕はタカオさんから貰ったカードに目をやった。
「帰還・・・?
って書いてるんだけどなにこれ?」
するとミサは顔を近づけてきた。
「すごーい。
ディメンションカードくれたんだ。」
「ディメンションカード?」
サトルがミサに聞いた。
「もーふたりともちゃんとヘルプ読んでよ。
話すすまないじゃない。
ディメンションカードはいままで行ったことのある町へ一瞬で移動出来るアイテムだよ。
お店じゃ買えないアイテムなんだって!」
へぇ・・・そいつは便利だ・・・
「やっぱヘルプ見た方がいいかな?」
サトルがミサの機嫌を伺うように聞いた
「決定!今から勉強会!
私が教えてあげるから!」
「いや・・・それは必要なときにミサが教えてくれれば・・・」
「ダメ!二人とも知らなすぎ。
私が一人覚えなきゃいけないなんてズルイ!
最低限のことは覚えて貰うからね。」
こうなったミサはもう止められない・・・
結局僕らは広場にあったベンチに座って勉強会をするはめになった。
ゲームの中でゲームの勉強をさせられるとは・・・
途中何人かのプレイヤーが近くに来て話しかけてくれたが、プレイヤーカードを交換するだけで、勉強をしていると言うと、苦笑いをしながら「がん
ばって」と言ってすぐどこかに行ってしまった。
勉強会が終わった時には残り時間が1時間を切っていた。