〜小説〜

ダイブ

第五章 過信

5 - 3

「やべ!そーいや使い方とかわかんない」


サトルもわからないようだ。


 


「スキルチップ心眼!」


「・・・」


ためしに適当に言ってみたがやはりダメだった。


ちょっとだけ恥ずかしかった。



使い方わからないのではせっかく取っても意味が無い。


しばらく二人で悩んだが結局わからずじまいだった。


そのとき


 


「心眼を覚えるって、言うんじゃないの?」


まさかのミサからの一言だった。



「だって装備とかそう言うと着れたし。


もしだめなら、ウィンドウのヘルプ見るとか方法あるじゃん。


って言うか・・・名詞だけ言って動詞を言わないんじゃ分かるわけないじゃん。」



正論だった。


 


ミサに言われたとおりに言った瞬間、スキルチップと僕の体が光に包まれた。


僕はスキル「心眼」を覚えることが出来たようだ。


 


「ありがとう!俺たち馬鹿だったわ。でもまさかミサに指摘されるとは。」


「馬鹿にしすぎだし!ねー?」


言葉では怒っているように感じるが、ニコニコ笑いながら召喚獣と戯れている。


僕達のことはどうでもいいらしい。


ニコニコしているミサと対照的に、召喚獣は無表情でミサの周りを飛び回っている。


表情は組み込まれていないみたいだ。


 


よく考えたらミサは僕たちよりも頭は良い。


大学での僕とサトルの成績はいつも下の上といったところだ。


一方、ミサの成績はクラスでもトップクラスらしい。


 


これからはミサの意見も真剣に聞こうと思った。


 

 

 

僕はあたりを見渡した。


すると右方向に赤い下方向の矢印を
4つ見ることが出来た。


また、サトルとミサの頭の上、
1メートルぐらいのところに青い矢印のようなものが見えた。




どうやら赤い矢印がモンスターで、青い矢印がプライヤーのようだ。


どれも背の高い草に隠れて見えるはずの無い場所だったのだが、間違いなくゴブリンだと確信をもてた。


「右方向にゴブリン4体いるけどどうする?」


 

「おっ!敵の場所わかるんだ!でも街まで残り少しだし、無視してもいいんじゃない?」


「うん。面倒くさいから街いこうよ。」


二人とも戦闘を避けようという意見だった。


 


これには特に反対する理由も無く、僕らは見つからないように先に進んだ。


 


途中、どうしても敵に見つかってしまう場面があったが、スキルのおかげで事前に察知することが出来た。


 


僕は弓を装備してこれを向かい打った。


僕の弓と、サトルの魔法で先制攻撃をかけることで、やつらが近づいてくる前に倒すことが出来た。


 


このスキルは本当に使える。


 


 


初めの街を出発してからおよそ1時間半。


2つ目の街に到着した。


前半、慎重に進んだせいで結構な時間を使ってしまった。


 


 


この町は前回の町と比べ比較的小さく、町の中心に塔が立っている以外は特に目立つものも無かった。


「さて・・・どうする?」


 

「んー武器とか新しいのがあるか見てみる?」


サトルは近くにあったいくつかの店が並んでいる方向を指差して言った。


モンスターを倒すと自動的にお金を得ることが出来るらしく、所持金はいつの間にか
10万円近くまで増えていた。


一番近くに武器屋があり、横には道具屋、防具屋があった。


 


しかし売っているものの中に新しいものは無かった。


 


 


道具などの消耗品をそれぞれが買い足し僕らは大きな塔の前にある広場に集まった。


3人が集まったところで、僕は時間を調べた。


残り時間は1時間と少しだった。



この3時間で強制終了というシステムをどうにかしてほしいところだな・・・


 


「残り1時間ちょっとだと隣町にいけるかな?」


 


「一番近い町はここからだと1時間かからないらしいよ?とりあえず次行こうよ?」


ミサは町の人から次の町への方角と距離を聞いていたようだ。


 


「ギリギリいけるかどうかって所だな・・・モンスターとの戦闘を考えると微妙だな。」


サトルはどうするか迷っているみたいだ。


「この町つまらない!次行こう!」


僕もミサの意見に賛成だった。


この町では特に得られるものもないようだし、いかにもって感じで町の中心に立っている塔も鍵がかかっていて中には入れなかった。


 


サトルは最後まで効率が悪いと愚痴を言っていたが結局次の町へ向かうことになった。


 


ミサの話によると次の町は小さな森を抜けたところにあるらしい。


森の中はしっかりしているとは言えないが、細い道があり、道に迷う心配なかった。



しかし高い木が多いため、草原と比べ視界が悪く注意も必要だった。




途中何回か戦闘になったが、出てくるモンスターも相変わらずゴブリンだけだったため、すぐに倒すことができた。




それでも戦闘を繰り返すたびに時間は過ぎていき、時間までに次の町には着けそうにないとうすうす感じ始めていた。


 


いまさら引き返しても意味がないことはみんな分かっており、スキル心眼のおかげで特に苦戦することもないので、このまま進むことにした。

 

 


この時、僕らはスキル心眼の能力を過信しすぎていたために、タチカワさんの言葉をすっかり忘れてしまっていた。



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