〜小説〜
ダイブ
第五章 過信
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昨日は疲れた・・・
あの後、4人で夕食をとったのだが、その間僕はずっと睨まれていた。
その後なんとか機嫌はなおったのだが、もう一度同じようなことが起きたらまためんどくさいことになる。
気をつけよう。
僕たちはリビングで朝食を取っている。
時間は午前8時少し前だった。
メニューはトースト、目玉焼き、ウインナー、サラダ、デザートにヨーグルト、食後にうまいコーヒーまでついていた。
僕たちが起きてリビングに行ったときには4人分ちゃんと盛りつけておいてあったのだ。
驚いたことに全部タチカワさん1人で準備したらしい。
昨日の夕食もタチカワさんが準備したものらしく、味もかなりのものだった。
昨日のコーヒーの味もそうだったが、下手なファミレスなんかよりもずっと豪華でおいしかった。
研究員じゃなく料理人や主夫の方が向いているのではないか?
タチカワさんは朝食をとった後に、これからのスケジュールの説明をしてくれた。
これから1週間、僕らは朝7時半ごろに朝食を取り、9時からゲームのモニターを行う。
その後、13時過ぎに昼食をとり、しばらく休憩してから15時にゲーム再会する。
19時に夕食、その後は自由時間というスケジュールで生活していとのことだ。
また、初日と2日目の午前中(昨日と今日の午前中)まではいわば試用期間にあたり、自由にゲームを進めていき、ゲームに慣れることが目的らし
い。
今日の午後から、初めに説明してくれたようにオンラインで全国各地の僕らと同じようなモニターの人と、一緒にゲームをする予定となっているとの
ことだった。
またタチカワさんはゲームに関してのアドバイスも話してくれた。
ゲーム内に出てくる敵を倒していくと一定確率でスキルチップというアイテムを落とすらしい。
スキルは1人3つまで登録することが出来る。
なかでも序盤に手に入る「心眼」というスキルは、30メートル四方にいる敵と、他のプレイヤーの場所を把握することが出来るようになるスキル
で、登録したほうがいいらしい。
しかしスキルも万能ではなく、中にはスキルを無効化する敵もいるらしい。
確かに昨日のように挟み撃ちに毎回あっていたら、少し強い敵が現れたら「気がついたら全滅してました・・・」なんてこともありえるだろう。
スキル無効化する敵はめったにいないものの、強い敵ほどスキル無効化してくる確率が高いため注意が必要とのことだった。
まだ聞きたいことはたくさんあったが、いつの間にか9時10分前になっていた。
僕らは急いでシャワーを浴び、スーツに着替え、カプセルの中に入った。
「あー・・・それじゃあ頑張ってね!」
タチカワの言葉と同時にカプセルがしまった。
この中は相変わらず気持ちいい・・・
昨夜はぐっすり眠っていたのにまた眠くなってきた・・・
気がついたときにはまた昨日と同じ場所で横になっていた。
昨日と違うのはちゃんと服を着ていることだけだった。
「タチカワさんの言っていたとおりに、はじめの場所に戻っちゃったね。」
ミサはすでに起きており、噴水のところで僕らが起きるのを待っていた。
サトルは僕の隣で、まだ気持ちよさそうに口をあけて寝ていた。
サトルを起こした後、僕らはこれからどうするか、相談することにした。
昨日の戦闘からわかったことは、この町周辺の敵ならよほどのアクシデントが起きないかぎり勝てそうだと言うことだった。
「タチカワさんが言っていたスキル「心眼」は、今のうちに・・・出来ればオンラインに接続する午後までには取っておいたほうがいいと思うんだけ
ど、どうする?」
敵の位置があらかじめわかれば、弓や魔法で先制攻撃することができ、圧倒的に有利な立場で戦闘することが出来るからだ。
それにこのゲームはプレイヤー同士が戦うPvP(Player vs Player)も出来るらしく、用心するに越したことは無いだろう。
今まで遊んできたネットゲームでいきなり他のプレイヤーに襲われることが結構あったからだ。
「魔法の詠唱時間って結構長いから、そのスキルは俺もほしいと思ってた。」
どうやらサトルも必要だと思っていたようだった。
「ん・・・いいよ・・・任せる。」
ミサは召喚獣をじっと見つめながら答えた。
興味が無いという感じだ。
結局、次の街を目指しつつ、スキル心眼を手に入れることを目標とした。
まず次の街に行くための準備をすることにした。
まず僕らは昨日の戦闘で消費したアイテムを買いなおした。
僕の武器は壊れていないため特に買うものは無かったが、サトルは魔法を使うたびにアイテムを消費するため、出来るだけ多めに買うことにした。
昨日サトルが使った「フローズンミスト」の魔術書は1つ1万円もするため非常時のために1つだけ買うことにした。
これで残金は2万円を下回った。
お金もなくなってきたので、出来るだけモンスターを倒して行きたいところだ。
次の街に行くまでどのくらい時間がかかるかわからない。
3時間以内に次の街に行かなければまたこの街からスタートになってしまう。
僕らは準備が整うとすぐに次の町に向かった。