〜小説〜
ダイブ
第四章 戦闘
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僕はすぐさま残りのゴブリンを睨みつけた。
先ほど倒したゴブリンの後ろにはまだ3体のゴブリンがいて、それほど遠い距離ではなかったからだ。
しかしやつらは先ほどの場所から一歩も動いていなかった。
様子がおかしい・・・。
3体それぞれおかしな行動をとっている。
叫び声をあげながら、手に持っている棒をむちゃくちゃに振り回し始めるやつや、頭を抱えてうずくまっているやつ、地面を這い蹲ってるやつ。
どうしたんだ・・・?
「まさか、目が・・・見えないのか・・・?」
僕は放った技の効果を理解することが出来た。
どうやら「グロー・ランス」は敵1体にダメージを与え、その後方にいるものの視界を奪うことが出来る技らしい。
そのとき後方からサトルの声が聞こえた。
「タクヤ!こっちにきてくれ!」
僕は言われたとおり2人の方へ後ずさった。
ゴブリンたちは変わらず目が見えない様子だった。
「よーっしゃ!いっくぜー!」
僕がゴブリンから10メートルほど離れたところでサトルが叫んだ。
「フローズン・ミストッ!!」
名前から察するに、サトルが氷の魔法を使ったようだ。
するとやつらを中心に白い霧のようなものが発生した。
霧はその濃さを増し、最後にはゴブリンの姿が見えなくなった。
次の瞬間、あたり一面が真っ白にかがやいた。
ピィィィン!
パキッ、ビキッッ!
大きな音と同時にゴブリンを覆っていたが霧が波紋のように広がり、消えていった。
目の前にゴブリンの姿は無かった。
あったのは高さ5メートルにも及ぶ氷の山だった。
氷の山はゴブリンを中心に円錐のような形をしており、近くの草は氷で覆われていた。
10メートル四方の草は完全に凍り付いており、先ほどまで暑いくらいだったのが今では肌寒くすら感じる。
「ははっ・・・すげぇなこりゃ・・・」
サトルはポツリとつぶやいた。
僕らは戦いに勝つことが出来た。
それも圧勝で。
「今の魔法すごいな!」
僕はすぐさまサトルのほうへ歩み寄った。
僕の足元に生えていた草も凍っており、歩くたびに「パキッ」っという氷が割れる音が聞こえた。
本当にすごかった。
下手したら僕まで巻き込まれていたんじゃないか?
っていうか・・・よく見たら僕の靴の表面が凍ってる・・・
巻き込んでるし・・・
「まー、今もってる最強の攻撃魔法だったしな!」
サトルは笑顔で自慢げに話している。
人のことは言えないが、いきなり最強の技を使うとは・・・
「ただやっぱり強いだけあって使い勝手は悪いわ!
発動するまで10秒近くかかるし、魔術書は1回で使えなくなるから頻繁には使えそうに無いな。」
よく見るとサトルの足元には黒い燃えカスのようなものが落ちていた。
「むしろタクヤの技のほうが使い勝手いいし強いだろ!
発動時間ほとんどかからないみたいだし、槍が壊れてないしな!
多分・・・槍についている石が全部なくなったら壊れるんだろ?」
よく見ると槍についていた宝石の1つがなくなっていた。
槍を買った時、たしかに宝石は5つついていたのだが今は4つしかない。
後4回使ったら槍が壊れる設定というわけか・・・。
その時後ろから、ゴブリン以上の、とてつもない叫び声が聞こえた!!!