〜小説〜
ダイブ
第三章 ダイブ
3 - 3
しばらくの沈黙の後、僕たちは顔を見合わせた。
「僕たちこれからどうする?」
「まず服かえない?このままだとなんか恥ずかしいよ。」
そうなのだ!
僕たちはタチカワさんに着るように言われたスーツ姿で町のど真ん中にいるのだ!
気のせいだとは思うが町の中にいるキャラクターからの視線すら感じる・・・
周りがコンピューターで作り出された物や人だとわかっていても、このスーツで町中を歩くのは恥ずかしい・・
「とりあえず服を売っている店を探そうぜ!」
僕らは防具屋を探すことに決めた。
町が大きく探すのに苦労しそうだと思ったのだが、以外にもすぐに見つけることが出来た。
町のキャラクターの大体半径2メートル以内に近づくと自動的にプログラムされているセリフを話すようだ。
2メートル以内に近づくたびに、同じセリフを何度も聞く羽目になるのは正直うざかったが情報収集に時間がかからないというメリットは大きかっ
た。
なによりこのゲームをもっと楽しみたいと思っていたからだ。
町のキャラクターからの話によると、この世界では一般的なRPGと違い固定された職業という概念が存在しないらしい。
要するに装備した武器防具によってキャラの特性が決まり、あるアイテム(武器、魔術書etc)を持っているキャラクターがそのアイテムに対応する技
を使えるというものだった。
技には使用回数が存在し、技を使うことで強力な攻撃が出来る代わりに、使用回数を超えるとアイテムが壊れるというシステムだった。
これにより鎧を着た重装備な魔術師など中々ありえないキャラクターになることも可能なようだ。
やはりその場合、魔法の威力は下がってしまうらしいが・・・
装備は使い勝手がよく、剣を装備すると考えるだけで手元に剣が現れるものだった。
持ち歩ける数は限られていたが、大量の荷物を持ちながら移動しなくていいことが何よりも画期的だと思った。
また、武器や防具は非常に軽く出来ており、女の子でも大きなハンマーを振り回すことも可能だった。
持つことが出来るアイテムの量からいって、それぞれ1つないし2つの職業が限界のようだった。
通常ならばゲームスタート時に装備一式を整えることは難しいはずなのだが、テストプレイという理由で、タチカワさんがゲーム内でのお金を100万
円を持たせてくれた。
ゲーム内での通貨を円に設定しているのは、よりリアルに感じさせるためだろう。
この世界の相場がどの程度かは知らないが、100万円なら初めの装備を整えるには十分だろう。
それぞれ似たようなタイプの装備が集まった防具屋と武器屋が町中に転々と配置されていた。
そのため、装備が整い次第、噴水前に集合ということで、僕らは分かれて装備を決めることにした。
僕は近・遠距離で活躍できる槍と弓を組み合わせて使うことに決めていた。
今までやってきたオンラインゲームでは前衛職は必須であるということと、槍・弓使いに愛着があるためだった。
槍にはいくつかの技が登録されており、通常攻撃は弱いが3つ技を使えるものや、技が無い代わりに攻撃力が飛びぬけて高いものまであった。
弓には矢が存在しなく、弦を引き矢を放つ動作をすると光の矢が敵に飛んでいくというものらしい。
僕はためしに技が1つだけ登録してある比較的大きな槍と、技が2つ登録してある携帯用の小さな弓を買った。
僕が買った戦士タイプの武器、防具を売っている店の隣はどうやら魔法使いタイプの店の隣だったようだ。
案の定、サトルは店の前で服を見ている。
ゲームだといつも魔法使い・・・
ワンパターンだな・・・あいつも・・・。
サトルはガチガチの魔術師装備を選ぶようだ。
魔術師は、技を使うまでに時間がかかる反面、広範囲に攻撃することが出来る特徴を持つ。
このゲームでもそれは変わらないらしく、説明によると魔法は魔術書などのアイテムに封じ込めてあり、杖の力で魔法を開放することで使うことがで
きるらしい。
魔法の種類も炎や氷、雷など様々なものがあり、杖の種類で得意とする魔法が異なるということだ。
つまり炎系の杖ならば強い炎の魔法を使えるが、氷の魔法はほとんど使えないという設定だ。
サトルは氷の魔法が気に入ったらしくいくつか魔法を封じ込めてある魔術書を買っていた。
僕とサトルが噴水で待つこと20分・・・やっとミサが現れた。
しかし、装備は僕を含め三人とも質素な布の服を着ているだけだった。