〜小説〜
ダイブ
第三章 ダイブ
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「あー・・・楽しんでくれているところ悪いんだけど・・・本題に入らせてもらうね。」
タチカワさんの声のトーンが下がったため、僕たちは騒ぐのをやめ噴水の台座部分に座り、黙ってタチカワさんの話に耳を傾けた。
タチカワさんの話は僕たちに与えられた仕事内容と、注意事項についての説明だった。
「あー・・・それじゃあ君たちにはこのゲームをプレイしながらバグを探してもらう。
バグと言ってもほとんど僕らがテストしたときに見つけているから、そんなに多くは無いと思う。
だから好きにプレイしてもらってかまわないが、2つ注意点がある。
1つ目がこのゲームが本当の意味でリアルに近いものだということだ。
僕の言っている意味わかるかな?」
僕には何のことかさっぱりわからなかった。
初めにサトルが言葉の意味に気がついた。
「それじゃあもし腕を切られたら本当に切れたように感じるってことですか?」
タチカワさんはうれしそうに声のトーンを上げ、僕たちに宣告した。
「そのとおり♪」
「あー・・・もちろんそこまで強い痛みじゃない。
ゲームだからね。
腕を切られたとしても引っかかれた程度の痛みだし、もちろん回復することも出来る。
ゲーム内でやられたとしても町に移動するだけだから安心して。」
僕は緊張感に似た興奮を感じた。
痛みを感じるゲーム・・・
その後、タチカワさんはゲームの説明を続けた。
「えーと・・・もう1つは現実世界の戻り方だ。
これには大まかに分けて2種類あるんだ。
1つ目がセーブポイントになってる女神像の半径5メートルに入って、「ゲーム終了」を選択したとき。
2つ目が3時間以上プレイしたとき。
これは「時間を見る」言葉に発すれば目の前に残り時間浮かぶようになっている。
ためしに言ってごらん?」
「時間を見る!」
すかさずサトルが言った。
するとサトルの目の前に黒いウィンドウが現れ、2時間56分という残り時間が記された。
「あー・・・同じように「ステータス」や「マップ」、「アイテム」を見たいと言えばウィンドウが開くようになっている。
もし3時間経過した場合、ゲームは強制終了して、次回スタートは最後に立ち寄ったセーブポイントからになる・・・このぐらいかな。」
タチカワさんの説明で、このゲームのセーブに関するシステムは、強制終了以外は通常のRPGと大体は同じってことらしい。
サトルは大体このゲームのことを理解したようで、他のウィンドウを開いて見ている。
ミサは・・・イマイチよくわからないという顔をしている。
「まぁ・・・僕からの説明はこれで終わりだから後は楽しんで。
ちなみに外部、つまり僕とコンタクトするにはセーブポイントのみになるから注意してね。
ゲームに関しては、町の中にいるキャラクターに話しかければ必要なことを教えてくれるからね。
それじゃあよろしくー♪」
すると先ほどまで聞こえていたノイズが聞こえなくなった。
タチカワさんが通信を切ったのだろう。