〜小説〜
ダイブ
第三章 ダイブ
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「タクヤ・・・タクヤ・・おい!タクヤ!」
サトルが叫んでいる・・・。
サトルの後ろで、ミサが心配そうに覗き込んでいた・・・。
ここは・・
「ん!・・・え?ここは??」
僕は起き上がりあたりを見渡した。
不思議と筋肉痛が消えていて体が軽い。
そこは見たことの無い場所だった。
僕は柔らかい芝生の上に寝ていた。
右手には中世ヨーロッパ(?)のものらしき見慣れぬ城が建っている。
すぐ隣には噴水と女神像のようなものがありその奥に大小さまざまな家がある。
「え?俺たちバイトで・・・」
自分が今何をしているのかわからなかった。
「うん。気がついたらここで寝てたの。」
サトルとミサも、まだ状況がつかめていない様子であたりを見渡している。
どこなんだ、この場所は・・・
その時どこからか声が聞こえた。
「あー・・・聞こえる?あー・・・あー・・・」
かすかにノイズが混じっており、フィルターがかけられているようで聞き取りづらかったが、それは確かに聞いたことのある声だった。
「タチカワさん・・・?」
「おー・・・全員接続したみたいだね。
これが僕たちが開発したバーチャルリアリティーゲームだよ。」
だが僕はその言葉を素直に受け入れることが出来なかった。
周りの風景、鳥の鳴き声、水の流れる音、すべてが現実と区別がつかなかった。
あまりにもリアルすぎる!
「え・・・?ゲーム・・・?」
「ためしに・・・そこの噴水の水触ってごらん。」
僕らは言われるがままに噴水に駆け寄り、水の中に手を入れた。
「冷たい・・!」
確かに冷たかった。
「水が流れてる感覚までちゃんと再現されてるぞ」
「風が吹いてる感じもわかる」
まさかここまで忠実に再現されているとは思わなかった。
この世界は、本当にタチカワさん達が作ったゲームだった。
本当にゲームの中に入っている・・・