〜小説〜
ダイブ
第二章 アルバイト
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僕らはシャワーを浴び終え、タチカワに渡された服に着替えた。
それは服というよりもダイビングスーツに近いものだった。
リビングではタチカワさんがコーヒーを飲みながら書類のようなものを読んでいた。
タチカワさんは僕らの存在に気づき、すぐさま一階の奥にある大きな扉の前までつれていった。
「あー・・・そうそう。
さっき言ったように精密機械が並んでるからあんまり触らないでね。
それじゃー開けるよ?」
そう言ってタチカワさんは扉を開けた。
扉の置くには約2メートルほどの通路があり、その奥にまた扉があった。
通路の奥のほうから風が流れており、ホコリが中に入らないように設計されているようだった。
2つ目の扉を開けると、中にはいくつもの大型のパソコンやモニターが並んでおり、その少し奥に2メートルほどのカプセルのようなものが4つ並んでいた。
部屋は常に空調管理されているようで、ファンの音や、並んでいるパソコンの作動音が鳴り止むことは無かった。
モニターには意味のわからない文字列が並んでおり、何かの処理をしているようだった。
その中でも特に異彩を放っていたのは奥に設置されているカプセルだった。
人が一人ちょうど入る大きさのカプセルには膨大な数の機械とコードがつながっており、内部はうっすら光ったり消えたりを繰り返していた。
タチカワさんは近くにあったパソコンをいじり始めた。
「えーっと・・・それじゃあ実際にプレイしてもらうね。
まー・・・驚くかもしれないけどそのカプセルに入ってゲームをしてもらう。
今あけるから。」
タチカワさんがキーボードをたたくとカプセルが開いた。
僕らは唖然としていた。
正直な話「意味がわからない!もっと良く説明すべきなのでは?」と言いたくなった。
そんな様子を感じ取ったのか、タチカワさんは面倒臭そうにカプセルの説明をし始めた。
「あー・・・簡単に説明すると、君たちにはカプセルの中で軽い睡眠状態に入ってもらう。
夢を見ている感じかな?
そこで着てもらったスーツから電気信号を送ることで、夢の中の映像や感覚を操作し、僕らの作ったバーチャルの世界に入る仕組みなんだよ。
大丈夫危険なことはないから。
すでに僕たちが何度も実験しているから保障するよ。」
「ちなみにそのスーツは電気信号を送受信しやすいようにするもので、よりリアルに楽しんでもらうために着てもらったものだから。」
僕はタチカワさんの言っていることの意味を理解しようとする努力で精一杯だった。
横目でサトルの顔を見てみたが、僕と同じで言っていることを受け入れることが出来ないという顔つきだった。
すると今まで黙っていたミサが目を輝かせて僕らに言ってきた。
「好きな夢を見れるみたいなことでしょ?
面白そう!とりあえず入ってみようよ!」
なぜかミサは異常なほど乗り気だ。
不安も大きかったが、そう言われてみるとどんなものか体験してみたいという好奇心もでてきた。
サトルも結局ミサに説得され、僕らはカプセルの中に入ることにした。
僕らがカプセルの中に入ったことを確認すると、タチカワはキーボードをたたき始めカプセルを閉めた。
カプセルの中は緑や黄色、青などにぼんやり光っていた。
カプセルの中の気温はちょうど良く、周りの材質は羽毛布団のようにとてもやわらかかった。
ちょうど耳の横にスピーカーのようなものがあり何の曲かわからないがとても落ち着く音楽が流れていた。
目の前にある小窓のようなものからは部屋の天井が見え、徐々に眠気が襲ってきたのがわかった。
何分経ったのだろう・・・
おそらく僕は5分も持たずに眠りについていた。