〜小説〜
ダイブ
第二章 アルバイト
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タチカワさんはテーブルの上においてあった書類とペンを僕らに渡してきた。
「さて・・・それじゃあこれを読んで、問題が無ければサインしてもらえる?」
渡された書類は契約書と書かれており、守らなければいけない規約が書かれていた。
1、
雇用期間中、及び終了後一年間はここで見たこと、行ったことを他人に話してはいけない。
2、
契約期間中は担当者の許可が無い限り研究施設から出てはいけない。
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要約すると、原則タチカワさんの言うことを聞き、ここで見たり聞いたりしたことを外部にもらしてはいけない。
これを破ると給料がでない上に、最悪の場合、裁判沙汰になるとのことだった。
機密保持のために必要なことだという話だった。
元々誰かに話すつもりも無かったし、求人情報にも住み込みという条件があったので、それなりの準備をしてきていた僕たちには、特に問題は無かった。
一通り読んだ後、僕らは契約書にサインをした。
「ん・・・みんな書き終わったみたいだね。
じゃあ仕事を始めますか。」
そう言うとタチカワは、椅子においてあったビニールの袋で包まれた布のようなものを僕らに渡してきた。
「えーっと・・・仕事の内容なんだけど、とりあえず実際にやって見たほうがわかると思うからシャワー浴びてこれに着替えてきて。
仕事場には精密機械がいろいろ並んでて、機械の天敵はホコリだからね。
シャワー室も人数分はあるし、必要なものはそろってるはずだから。」
僕らは言われたとおりにシャワーを浴びることにした。
シャワー室はかなり大きく、いくつかの扉が並んでいた。
扉の中は広い個室になっていて、たとえるなら海水浴場に設置してあるシャワー室の超豪華版とでもいえるものだった。
シャワー室にはボディーソープとシャンプー、コンディショナーが置いてあり、自由に使えという話だった。
「バーチャルリアリティってなに?」
髪の毛を洗っている時に不意にミサの声が聞こえてあせったが、良く見ると壁と天井の間には隙間があり、会話することが出来る構造になっていた。
バーチャルリアリティ・・・そういえばそんなこといってたな・・・。
ミサはそういうことに詳しくなく、タチカワさんの説明が何のことかわからなかったようだ。
「形は異なるが、機能としての本質は同じであるような環境を、感覚を刺激することにより理工学的に作り出す技術。
簡単に言うとアニメやゲームの世界に入り込んだような錯覚をあたえるってこと。
って言ってもせいぜいモーションセンサーかなにかを使って、ゲームのキャラクターを動かす程度だろうけどね。」
サトルは棒読みで、どこかのweb辞典に書かれてそうな単語を並べ説明した。
おそらく昨日のうちにいろいろ調べたんだろうな・・・。
その後も、ミサは興味が尽きぬようで、同じような質問を繰り返し、それを一つ一つサトルはわかるように詳しく教えていた。
僕には無理だ・・・。
めんどくさい・・・。