〜小説〜
ダイブ
第一章 はじまり
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コンピュータールームは冷房が効いており、中に入った瞬間に心地よい風が当たり、汗が引いていく様子がわかった。
1限目が始まったばかりだったため、コンピュータールームにほとんど人はいなかった。
僕らはそれぞれ、近くにあったパソコンのスイッチを入れ、メールに載っていたURLを打ち込んだ。
サイトにはゲーム会社のロゴと、名前、住所、年齢などの個人情報とアルバイトの希望日を打ち込むタブがあった。
「いつからバイトする?」
「別に予定ないし明日からで良いんじゃね?」
「私も明日からでいいよ。」
三人そろって予定が無いなんて・・・暇人だな・・・と思ったが口には出さなかった。
個人情報とアルバイトの希望日を送信すると、新しいウィンドウが開き簡単なテストを受けさせられた。
テストは性格判断などから始まった。
文章が書いてあり自分の性格がそれと、完全に当てはまる、全く当てはまらないなど5つの段階のどこに位置するかなどの問題だった。
それは10分ほどで終わり、次に心理テストのような物を受けることとなった。
いくつかある絵から、自分が好きだと思う絵を選ぶ問題などがあった。
最後に採用の合否は電話で連絡するとのことだった。
正直こんなテストで何がわかるか僕には理解できなかった。
「どうだった?」
ちょうど二人もテストが終わったらしく僕は声をかけた。
「ん〜よくわかんなかった」
「これって正解なんてないだろうから電話を待つしかないだろう。みんな受かればいいな!」
確かに一人だけ受かっても嫌だと思った。
その後、二人は講義があるらしく、僕は一人でゲーム会社について調べることにした。
見たことが無いロゴだったため、調べるのに時間がかかるだろうと予想していたが、思っていたよりも簡単に調べることが出来た。
比較的歴史のある大きな会社だった。
株式会社FNH
主にアーケードゲームやコンピューターゲームの開発を請け負う日本のゲームメーカーである。
また、20xxから独自に開発したオンラインゲームの運営管理、体感ゲームの開発に着手中。
他にもいろいろな情報があったが会社の歴史などあまり役に立つとは思えないものしかわからなかった。
「んー・・・まぁ普通だな。」
ブーーッ!ブーーッ!・・・
その時携帯に着信が入った。
「はい。」
「お忙しいとこ申し訳ございません。株式会社FNHです」
ゲーム会社からの電話だった。
「アルバイト採用に関してお電話させていただきました。今お時間大丈夫ですか?」
「あーはい・・・。大丈夫です」
「選考の結果、合格とさせていただきます。」
「ありがとうございます。」
「それでは入力された住所を元に場所や日付等に関しましての詳細をメールにてご連絡させていただきます。それでは失礼いたします。」
5分後、ゲーム会社からメールが来た。
明日15時に隣町にある会社の施設へ着替え等を持ってくるようにとのことだった。
申し込んだは良いが、まさか本当に次の日から仕事をさせられることにはなるとは思っておらず、若干驚いた。
しかし早ければ早いほど夏休みの計画が立てやすいため、僕にとってはむしろ好都合だ。
僕は受かったけど二人はどうなったんだろう・・・
そう思い、サトルにメールを送ろうとした時、メール受信中の画面が現れた。
メールの送り主はサトルだった。
二人も同じように合格し、僕と同じ時間に、同じ場所へ来るようにメールが来たらしい。
しばらくしてサトルとミサの授業が終わり、昼ごはんを食べながら明日の待ち合わせ場所などについて簡単に話をした。
僕はもう午後から暇だったのだが、二人は午後にも出席しなければいけない講義があるらしい。
僕たちは明日駅前に集合するという約束をして、その日は分かれた。
少年は特にやることも無く暇だった。
少年は吸い寄せられるようにある建物に入っていった。
少年は財布に入っている最後の1万円札を機械に入れ、銀色の玉へと交換した・・・
5時間後・・・
とてつもなく暗いオーラを身にまとった、少年がある建物から出てきた。
「今なら電車を止めることすらできる気がする・・・」
少年は、そう言葉を発し、家路に着いた。
僕が家に着いたのは7時少し過ぎたところだった。
なぜだろう・・・
ここ5時間ほどの記憶が曖昧だ。
正確に言えば思い出したくないだけかもしれない。
思い出そうとすると、なにかが心の奥からこみ上げてくる・・・
あそこでやめておけば・・・
僕は気分を変えるために、2〜3日分の着替えを昔使っていたリュックに詰め込んだ。
それでも寝るには早かったので、アルバイト先の会社をインターネットで調べることにした。
しかし今朝調べた以上のことはわからなかった。
あまり大きな会社じゃないのだろう。
「おそらく明日からやらされることはネットゲームか体感ゲームのモニターか何かだろうな。一応、実績もあるみたいだから大丈夫か・・・」
僕は調べることに熱中していたらしく午後11時を回っていた。
明日から住み込みで働くことになる。
あまり夜更かしせずに寝ることにした。