〜小説〜
ダイブ
第七章 搭
7 -
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「少し待ちなされ!」
僕らが塔へ行こうとするとおじいさんは懐からなにやら紙を取り出し僕らへ渡してきた。
一番近くにいたサトルが紙に触れたとたん、紙は光の粒になり消えていった。
「ん?どういうことだ?」
「アイテム欄から開いて見てくだされ。
それでは頼みましたぞ。」
丁寧にもおじいさんはさっきの紙の場所と使い方を教えてくれた。
サトルがアイテム欄を開くと先ほどまではなかったアイテムが追加されていた。
「塔の地図(キーアイテム)」
サトルが地図を開くと、アイテム欄とは別のウィンドウが目の前に現れた。
そこに記されていたのは塔内部の詳細な地図だった。
地図にはトラップの場所や種類、解除方法などが細かく記されていた。
トラップの中には正直、かなりあくどいものが存在し、一撃でゲームオーバーになるようなものもあった。
恐らくこの地図がなければ僕たちは初めのトラップにかかり全滅していただろう。
このクエストを受けることが塔攻略するための条件だったようだ。
だが僕らが前回この場所に来たときにおじいさんは話しかけてこなかった。
何かイベントが始まるスイッチがあったのだろうか?
そう考えているうちに、僕らは塔の目の前にやってきた。
塔の中に入る扉は鉄で出来ていて、扉の前には簡単な槍を持った門番が一人立っていた。
「この塔は現在魔物が出ていて危険です!
入らないでください!」
「だってよ?どうする?」
サトルは無視して扉を押した。
「確か前回調べたときは扉があかなかったんだけど・・・」
すると鉄の扉は大げさな音を立て簡単に開いた。
おじいさんのクエストを受けないとあかない仕組みなのか・・・?
「入るなって言うんなら、今までどおり鍵閉めておけよな!」
サトルは笑いながら塔の中へ入っていった。
門番は動く気配はまったく無く、ただにらんでくるだけだった。
塔の中は、岩肌が露出している壁が奥へと続いていた。
中は薄暗く、壁にかけてあるたいまつの炎だけがあたりを照らしゆらゆら揺れていた。
心眼スキルを持っていて、防御力の高い僕が先頭で進んでいくことになった。
入り口近くは比較的狭い通路だったが、10メートルほど進むと大きな部屋に出た。
部屋は20メートル四方の正方形に似た形をしており、左右に通路が見えた。
この部屋も明かりは壁にかかっているたいまつの光だけだったため、目を凝らさないとよく見えない。
ただでさえ見にくいのに、たいまつの炎が揺れるたびにでこぼこした壁の影が動いき不気味さが増している。
「MAPを見る!」
僕の後ろにいたミサが急にマップを開いた。
「サトル?地図だとここにトラップがひとつあったよね?
私がMAP見ても今進んできた通路しか表示されない!」
僕は先頭で進むプレッシャーとこの塔の不気味な雰囲気で、トラップの存在をすっかり忘れていた。
おじいさんから渡された地図はサトルが持っており、トラップの場所と、上へ昇る階段への道はサトルのMAPでしか見れないようだ。
「MAPを見る!」
サトルの目の前に黒いウィンドウが開き、塔一階の正確な地図が現れた。
「おーあぶねー!
このフロアの左奥の床にスイッチがあってそこを通ると部屋の左半分が落とし穴になるトラップがあるみたいだ。
他に一番近いトラップは左側の通路の途中にあって、階段へは右側の通路からしかいけないようになってる。」
「アイテムから開かなくてもちゃんと見ることが出来るんだ!?」
「そうみたいだな!ただ2階とか見るためにはアイテムから開かないと無理っぽい!」
「とりあえず左側に行かないで右側の扉まで行けばいいってこと?」
「そゆこと♪いいねーなんか冒険してるって感じになってきた!」
サトルは少しテンションがあがってきたようだ。
うれしそうな顔をしながら手を振り回している。
オンラインゲームをやってる時も、あいつはまだ行ったことの無いマップに行くとテンションあがってたからなぁ・・・
僕らは壁沿いに右側の通路まで進んだ。
この通路は比較的広く幅が5メートルほどあり、10メートルほど進んだあたりで左へ曲がっていた。
「ちょっと待って!」
僕は危うく見逃してしまうところだった。
通路のちょうど曲がった先と、直前の壁の下に赤い矢印が地面から少しはなれたところに浮いていた。
「モンスターだ!奥に2匹・・・地面に埋まっているみたい・・・。」