プロローグ
ドンッ!
中年男性の目の前で『それ』は弾け飛んだ。
かみのけが焼けたようなイヤな臭いがあたりに広がり、何かがあたりに飛び散った。
昔の面影など微塵も感じることができない。
すでに原型をとどめていないにもかかわらず、『それ』は何かを探すように動き回っている。
「すぐに追ってくる!」
中年男性の少し後ろにたっている青年が叫んだ。
青年の後ろにいる若い女性は、目線もおぼつかない様子でただ震えているだけだった。
中年男性はすぐに立ち上がり若い男女のほうへ駆け寄った。
額には汗がにじみ出ている。
「やつが追ってくる前に少しでも遠くに行くぞ。」
3人は急いでその場を後にした。
どのくらい走ったのだろうか。
すでに声を発する余裕も無く、汗だくになっていた。
ついに中年男性は地面に座り込んだ。
「はぁ・・・はぁ・・・頼む!少し休もう・・・」
「チィッ・・・はぁ・・はぁ・・」
青年が軽く舌打ちをしたが、息づかいが荒くなっている中年男性の耳には聞こえなかった。
すぐに青年は辺りを見回した。
横には大きな丘があったが反対側は平地となっており、比較的見渡しの良い場所だった。
「ねぇ!どうなってるの?何なのよアレ!!」
女性がものすごい勢いで中年男性に食って掛かった。
「わからない・・・あんなもの存在するはずがないんだ・・・」
「じゃあ何!?さっき見たものは!あんたたちが作ったものでしょ責任取りなさいよ!」
中年男性は眉間にしわを寄せ何かを考えているそぶりをしたが、なにも思い浮かばなかったのか大きく肩を落とした。
中年男性は起きあがり青年のほうへ向かった。
「時間は?今何時間経過した?」
「あんたの言ってた時間はとっくに過ぎてる・・・どうすれば戻れるんだ?」
「初めに説明した通常の方法では戻れなかった・・・残る方法は・・・」
バキッ!!
一瞬の出来事で誰一人動くことは出来なかった。
何かが中年男性の上に落ちてきたのだ。
中年男性の上に落ちてきた「それ」はほんの数十分前にたしかに粉々に吹き飛んだ物体だった。
ぐぢゃっばぎゅあびゃ・・・・・・・・びぎゃあびゃ・・・・
びゅあふぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!
あびゃ・・・・ぐぎゃあびゃ・・・・・・・・・・バキッッ!
びぎゃあびゃ・・ぐぎゃあびゃ・・バキボキッ!!!!
「それ」はものすごいスピードで中年男性の上に覆いかぶさると、気味の悪い大きな音を立てながら中年男性を取り込み始めた。
「どーすりゃいいんだよ・・くそがぁぁ!!」
「・・・・・・・・ズリュッ・・」
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